多くの発達障害児への教育、療育施設での指導では、

よく指導者が間違った指導法をしていることがあります。

それは、「できない」と断定してしまうことです。

 

現在一般的に発達障害と言われている症例は、

自閉症スペクトラム障害

注意欠陥多動性障害(ADHD)

学習障害(LD)

三つです。

少し前までは、「アスペルガー障害」を含めて四つとされていましたが、

「自閉症スペクトラム障害」との判別が難しいこともあり、統合されました。

また、医療機関や各地区の療育センターなどでは、IQテストなどから判断し、

発達障害」という大きい枠組みでの診断が出ることもあります。

 

これらは、上記の通り判別が難しいということもありますが、

わたしとしては、ほとんどのケースが併発していることが多いため、

こういった枠組みになっているのではないかと考えています。

 

ねこ屋ではお子様に対する学習指導カウンセリングを行う機があり、

以前も療育施設で働いていた経験があることもあって、

多くの発達障害のお子様の事案を見てきましたが、

ほとんどの場合、小学校低学年から中学年へと変わる間に、

違う障害の併発を起こしているように感じられました。

 

そのため、情緒面に不安があったけれど、

学習面には特に問題がなかったというお子様が

小学校高学年や中学校に入る頃には、二学年から四学年

学習への理解が遅れているということが頻繁に起こっています。

 

それらは、現在の障害児への教育、療育においての、

指導者の考え方が大きく影響しています。

 

ねこ屋がある川崎市では各小学校、中学校で支援級というかたちで

発達障害のお子様を含めた障害児の受け入れを行っています。

支援級には身体障害知的障害精神障害のお子様が在籍しており、

この三つの中で精神障害に区分される発達障害のお子様も

こちらに在籍していることが多いです。

 

しかし、支援級で受け入れているお子様がお持ちの障害の幅は広く、

そのお子様たちをコーディネーターを含めた6名程度の教員で指導にあたっているので、

指導カリキュラムは障害の深度が深い方に合わせている印象を受けます。

社会生活への順応を重視した授業カリキュラムが多く、

各学年の主要教科の学習要項を完了していることは稀です。

 

また、近年川崎市内だけでも増加の一途にある放課後等デイサービスでも、

学校と同じ状況が見られます。

 

けれども、これは致し方ないことだと思います。

指導にあたる先生方は、慢性的な人手不足の中、

それぞれのお子様の心を慮りながらも、事故が起こることがないよう

細心の注意をはらい職務にあたっていらっしゃいます。

更には、親御様のご要望と、お子様のご要望バランスはからなくてはならないため、

どうしても実施出来ることが限られてきてしまうのです。

 

勿論中には熱心にお心を割いて指導にあたってくださる先生もいらっしゃいます。

けれど、個々の課題に合わせて環境指導方針を整えると、

今度は個人主義になってしまい、お子様の依存性が高まってしまったり、

同世代のお子様とのコミュニケーション能力が育まれなかったり、

学校の方針からズレてしまったり、と

先生、生徒共に孤立を深めてしまう結果になってしまいます。

 

では、どうすればお子様、親御様、指導者の全てが前進していけるのか……

そこで大切になってくることが、「できない」と決めつけずに、

できないとき」を見極めることです。

 

まずは、原点に立ち戻って考えてみましょう。

小学校に入学した際、

ひらがなを間違えて書いてしまう、

足し算引き算が解らない、

これは果たして障害のせいでしょうか?

お友達と喧嘩してしまう、

忘れ物をする、

独りでトイレに行けない、

こういったことは自分自身にも経験のあることではないでしょうか?

 

発達障害という診断がおり、支援級に在籍することは、

お子様の情緒面を考慮するなら決して悪い選択ではないと思います。

特に小学校では、無理して普通級に在籍し、

結果不登校などの問題に発展してしまう危険性を考えれば、

確実に良い教育環境と言えると思います。

 

けれど、決して間違ってはいけないのは支援級に入ったからといって、

そのお子様は何もできない」お子様ではありません。

周囲より苦手なことが多かったり、「できないとき」があるお子様なだけです。

何故なら、学校の授業は本来なら受講する生徒全員が初見で、

一回で理解できないことはままあることだからです。

ですから、発達障害と診断がおりたからといって、

できない」と決めつけてはいけません。

 

あくまで支援級は「できないとき」にフォローをしてくれる場所

苦手なことをそのお子様に適した方法で指導してくれる場所

普通級では出来ない社会経験活動が行える場所

として考えるのが適切だと思います。

 

そして、親御様指導者がお子様の「できないとき」について

しっかり話し合っておくことが重要だと思います。

朝の登校時、お子様のどういったシグナルが出ていたら「できないとき

普通級で扱う単元がこういったものだったら「できないとき

そういったことを大人話し合ってしっかり判断してあげていくことで、

子供挑戦意欲を失わずに、周囲に与える影響を考えながら、

自分の「できないとき」を判断出来るようになってきます。

逆に、大人が「できない」と決めつけてしまったり、

できないとき」の判断を間違えてしまうと、

子供やりたくないことをやらなくなってしまったり、

やりたいと思ったことは周りに迷惑をかけても気にせずにやるようになってしまいます。

 

できないとき」をしっかり見極めることで、

お子様同年代の子と距離をおいてしまうことを防ぎ、

学習格差が開いてしまわないようにすることや、

御様何度も学校に呼び出されることなく、

要望を学校に伝えやすくすること、

指導者指導方針活動内容決めやすくなること、

などが可能になってくると考えています。

 

さて、ここまで主に支援級に焦点を置いて述べてまいりましたが、

通級に通っている方や、通所療育施設においても同じことが言えます。

けれど、それは発達障害というのが前提であり、身体障害や知的障害、

精神障害の診断を受けた全ての方に当てはまるということではないこともご理解ください。

その上で、「発達障害だから勉強ができなくて困っている」や、

発達障害だから将来の進路が不安」、

支援環境を整えているのに全然成長が見られない」、

と悩まれている方の突破口になればと思っています。